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Page No.41
◆ オンラインのオークション ◆
Essay041 掲載 2016/7/17

 素晴らしいシリンダー・オルゴール( 写真1 )をオークションで見つけました。イギリスのセルボーンという田舎の村で営業しているオークション・ハウスが出品したものです。セルボーン( Selborne )はハンプシャー州の東端、ロンドンの南西約80キロメートルに位置する小さな村で、ギルバート・ホワイト著「セルボ−ンの博物誌」という書物で知られている典型的なイギリスの美しい田舎の村です。
 解説にはLate 19th Century by Nicole Freresと書かれていますが、文献によると正しくはもう少し早くて1820〜1830年の間にフレール・ニコルと表示されていた初期のニコル・フレール社によって作られたものです。シリンダーは長さ8インチ≒20p、直径2インチ≒5p、ケースの長さは13インチ≒33p、当然キーワインドで割と小柄なオルゴールです。F NICOLEの刻印が打たれている櫛歯は写真2で見られるように、かなり細長いプロポーションと密な間隔で、低音部の豊かなソノリティーを保証しています。箱は破損したものを応急修理したように見えます。製造番号の刻印は見当たりません。チューン・シートは失われています。この頃のオルゴールはコスト削減に追われることもなく伸び伸びと設計されていたようで、編曲も優れていました。後期に作られた大きくて鋭い音を出すオルゴールとは異なり、やや小さな音量でソフトな甘い音を出していました。ニコル一族が直接手を下して作った初期のシリンダー・オルゴールは、その豊かな音と優れた編曲でコレクターが熱心に追い求めているものです。現在では大半がコレクターの手元で死蔵されているはずなんですが、なぜこのように1台だけがポツンとオークションに登場したのでしょうか。ニコル・ファクターという書物の付録に、優れたニコル・フレール製オルゴールがたくさん収録されています。
 コレクターが亡くなった時は、残された遺族は20台とかの大ロットで、オルゴールを扱いなれている骨董商経由でオークションにかけるのが普通の状況でしょう。もちろんそのような場合はまともな価格がつけられていて、私のような庶民には手が出せませんが。

 エスティメイト( 落札予想価格 )は200〜300ポンド( 手数料を入れると35,000円〜53,000円 )と激安、2週間前にさっそく220ポンドで応札。でもオークション終了間際に大暴騰するのじゃないかと予想していました。それとも何かよくわからない欠陥を抱えているのでしょうか? 写真で眺める限りは故障していないように思います。
 オークションは全部でロットNo.601〜1386の790ロット、そのうち中国関係の書画骨董が約430点、時計が約100点、その他に家具や絵画、陶磁器、中古日用品等。オルゴールはたったの3点だけでした。オークションは2016/7/15の17時頃に始まりました。3時間くらいかかってロット854に到達。画面下部に現在価格の1ランク上の価格とボタンが表示( 写真3 )されます。そのボタンをクリックすると、その1ランク上の価格でビッド( 応札 )したことになります。ロット854は二人の一騎打ち( らしい )で直ちに大暴騰、あっという間( 15秒ほど )に2,200ポンド、手数料を含めると約40万円、やはり見る人は見ているもの、掘り出し物なんて夢のまた夢、完敗デス。これのひとつ前のロット853はメテーァ製( Metert )の初期型で、落札予想価格は600〜800ポンドと高い! これも同じくらいのレベルの優れたオルゴールと思いますが、ネームバリューが無かったためか、結果はたったの260ポンド。

 目標額を決めて、自制心に従わないと熱くなって危険でしょう。高いビッドを入れて確実に落札するよりも、ライブで価格を見ながらビッドを入れた方が安く落札できそうだということが分かり、いい経験でした、コレ負け惜しみ。ロット853のような隠れた名工の作品で、写真から良い音楽が期待できるかどうかを判断してビッドすると安くていいものが入手できそうです、コレモ負け惜しみ。

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