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Page No.25
◆ アリオンのディスク・オルゴール( Arion ) ◆
E025 掲載 2007/5/6

永い趣味歴を誇るオルゴール愛好家の方でもアリオン(Arion)という小さな工房で作られていたらしいブランドはご存じないでしょう。オルゴールの投稿サイトMMDでもまだ取り上げられたことはありません。MBSIの機関誌Mechanical Musicでは2回取り上げられております。1995年冬号でカルソン・カン氏(Coulson Conn)の記事と2007年5〜6月号のビル・ワインバーグ氏(Bill Wineburgh)の記事です。サイト・オーナーも実機を見たことがありません。写真は著作権の関係でここに掲載することは出来ませんので、該当するMBSIの機関誌Mechanical Musicをご覧ください。アリオンのディスク・オルゴールは直径が5インチ(127mm)のディスクを使用する小型(1台は200 X 133 X 86mm)のものだけが合計4台知られています。その写真を見るとムーブメントはヘルヴェティア(Helvetia)、トーレンス(Thorens 左の写真参照)やエーデルワイス(Edelweiss)の4-1/2インチのディスク・オルゴールによく似ています。
トーレンスの小型ディスク・オルゴール各種

左の写真はトーレンスの小型ディスク・オルゴールで、現行モデルです。いろいろなデザインのケースに入れて販売されています。アリオンのムーブメントの構造はこれによく似ています。

右の写真はトーレンス製の4-1/2インチのディスク・オルゴールで現行モデルです。ディスクの周囲に歯車(セレーテッド・ギア)が切られているのに注目してください。
トーレンスの小型ディスク・オルゴール
アリオンのプレッシャーバー イラストで見られるように、プレッシャー・バーの先の切り込みの中央に釘のような突起が付いています。これはプレッシャー・バーがセンター・スピンドルの切り込みに滑り込んだ時に、しっかりとディスクの上のプレッシャー・バーを保持するためのものです。
カン氏所蔵のアリオンのオルゴールは1台がエッジ・ドライブ、もう1台はセンター・ドライブです。2番目のアリオンに付属していたディスクの一部はセンター・ドライブにもかかわらず周囲に不要なセレーテッド・ギアを持ち、最初のエッジ・ドライブのアリオンでも完璧な演奏が出来ました。

ワインバーグ氏所蔵のアリオンはどちらもセンター・ドライブで同じサイズのディスクで演奏します。ディスクはメーカーの名前が記されてなく、単に曲名とスタート位置を表す矢印が記されているだけです。ディスクは直径が5インチ(127mm)で、周囲に歯車の歯(セレーテッド・ギア)が切られておりますがエッジ・ドライブとしての駆動には使われていません。

カン氏はアリオンを作ったのはスイスの村落、それもエーデルワイスやヘルヴェティアを作っていた工房の隣近所に有った小規模工房の作品ではないかと推測しています。彼はヨーロッパ在住の親しい大コレクター二人(オランダ・ユトレヒトのルーク・ゴールドホーンLuuk Goldhoorn氏とスイス・ジュネーブのエティエンヌ・バイイEtienne Blyelle氏)に何か情報は無いかと聞いてみましたが、どちらの方もアリオンについては情報を持っていなかったようです。

 アリオンと混同されそうな他の二つのメーカーはユンハンス(Junghans)とSilvanigraの4-1/2インチ(114mm)でしょう。この二つのディスク・オルゴールはスピード・レギュレーターを持っているのが特徴です。なお、この二社のディスクはアリオンでも演奏可能のようです。

この取るに足らないような、小さなディスク・オルゴールを作っていた小さな工房ですが、まだまだオルゴールの世界には未知のブランドや工房が存在したということを皆様に知っていただきたくて、このEssayで取り上げてみました。

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