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Page No.20
◆ シリンダー・オルゴールを買うとき #2 ( 時代 ) ◆
Essay020 掲載 2006/3/10

シリンダー・オルゴールの購入を検討する時には、目当てのオルゴールがどの時代に作られたものかも重要な問題です。オルゴールが大体いつごろに作られたのかという、時代様式のようなものを書いてみましょう。またオルゴールのムーブメントに刻印されたシリアル番号で製造年の見当が付く場合もあります。


ごく初期のオルゴール 1796年?〜1810年ごろまででしょうか。
櫛歯による演奏が発明されたころの、ごく初期のオルゴールは小型で普通に想像される形からかけ離れた格好や構造をしております。バリレットとかサー・プラトウと呼ばれるムーブメントを持っていて、指輪や封蝋( sealing wax )に捺す印鑑( fob seal )、懐中時計などに組み込まれているものが多いです。このタイプのオルゴールはとても珍しく貴重なもので、普通の人が普通に開催されているオークションなどで入手できることはまずありません。サイト・オーナーに言わせると音楽的な価値は大きくなく(負け惜しみ)、歴史的な意味と高価な素材(金銀宝石など)を細密に仕上げた工芸品としての価値のほうが大きいと感じております。

初期のオルゴール 1820年まででしょうか。
初期のオルゴールは櫛歯の形態がセパレート・ティースになっていて、シリンダーセメントが入れられていません。セメントの有無が音質に大きく影響します。後世のリストアの過程でシリンダーにセメントを新たに入れられたもの(音質がぐっと改善されます)も多く有ります。フュージ・ドライブのものがよく見られます。小型の物でスナッフ・ボックスに組み込まれたものがたくさん作られました。この時期のスナッフ・ボックス以外のオルゴールはとても入手が困難です。

キーワインドの初期のオルゴール 1860年以前。
この時期にオルゴールはその地歩を確立し音楽的に最も優れたものが作られました。まだオルゴールがコマーシャリズムに毒されていない時期で、ムーブメントの基本的な性能(音楽性)が重視されていました。4〜6曲という少ない曲数で柔らかくて大きくない音を出します。櫛歯の数を倹約するということなく、のびのびと入念に編曲されています。
この時期のオルゴールのケースは必要最小限の大きさのプレーンな素っ気無いデザインです。3本( チェンジ・リピート、スタート・ストップ、インスタント・ストップ )のコントロ−ル・レバーエンドフラップで隠されているか、又はエンドフラップが無くて(より古いタイプ)ケースの左端に飛び出しています。この時期にガラス製の内蓋が入れられるようになりました。ベッド・プレートは真鍮製です。演奏される音楽という観点からはこの時期( 1820年〜1860年 )のオルゴールが最も優れているのではないでしょうか。

レバーワインドのオルゴール 1860〜1875年。
この時期にゼンマイ(スプリング・モーター)の巻き上げ方式がキーから左端に取り付けられたレバーに、コントロール・レバーがケースの内側右端に組み込まれるように変わっていきました。この過渡期のオルゴールはより陽気で音量が重視されるようになりました。そしてコストダウウンの要求や外観の派手さなどコマーシャリズムの影響も現れてきました。

後期のシリンダー・オルゴール 1876年〜1920年。
この時期にはコマーシャリズムがより露骨になり、シリンダー・オルゴールもいろいろな可能性が試みられました。マンドリンハープエオリアンサブライム・ハーモニーボワセレステチターなどです。インターチェンジアブル・シリンダー・オルゴールも盛んに作られました。
特に1890年以降はドイツで発明されたディスク・オルゴールとの競争(というよりも負け戦)が激しくなっていきました。そしてベル、カスタネット、ドラム、ウッドブロックなどが付け加わるようになりました。特にオーケストラ・ボックスと呼ばれるオルゴールはケースが必要以上に巨大化し見栄えは貫禄たっぷりとなりましたが、このような付属品を制御するために櫛歯の一部が使われるようになってオルゴール本来の魅力が弱体化していったように感じるのはサイト・オーナーだけでしょうか?
しかしオーバーチュア・ボックスとかグラン・フォーマットとかバリエーション・ボックスと呼ばれる最高クラスのオルゴールは、いつの時代のものでも会社の威信をかけて作られていますので状態が良ければ(リストアを完璧にすれば)本当に素晴らしいものです。

ウインナ・スタイルのオルゴール
オーストリア・ハンガリー帝国のウイーンやチェコのプラハで作られていたウインナ・スタイルと呼ばれるオルゴールは、長年(100年近く)に渡って設計をほとんど変えませんでした。この事情についてはEssay002、003の「プラハとウイーンのオルゴール」をご覧ください。この種のオルゴールのオークション評価が低いのは不思議です。

現代のシリンダー・オルゴール 1920年〜現代
1920年までに大型のシリンダー・オルゴールはディスク・オルゴールに侵食され、蓄音器にノックアウトされてしまいました。その後はノベルティー・グッズ(お土産品)用の小型オルゴールだけが生き残りました。小型の72ノートクラスのものが今でも作り続けられていますが、台数ベースでは18ノートクラスの雑貨品が天下を取ってしまいました。この時期のものはまだアンティークと呼ぶのにはムリがあるようです。

さて、どのシリンダー・オルゴールを買うかですが、
まず博物館やCDでたくさんの機種を聞くことをお勧めします。
オークション・カタログやMBSIの雑誌広告で価格や修理費用の見当をつける。
故障を修復する費用と購入する費用のバランスを見積もる。
良いオルゴールが出たらすぐ行動を起こせるように準備(具体的には配偶者の同意・・コレ困難を極めますゥ〜)。
それではコレクターの皆様の力で優れたシリンダー・オルゴールをたくさん日本に招いてください

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