バイヤーズ・プレミアム ( buyer's premium )
g063 G0631 掲載 2005/4/19
この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「」G0117の記事を参照してください。その記事の中では赤字でこの用語を表記しています。
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バリエーション・ボックス ( variation box )
g063 G0626 掲載 2006/3/18
の型式の一つで、音楽という観点から聴くと最も面白いオルゴールと言えるでしょう。1850年にはすでに作られていて、1860年以降も作り続けられたようです。外観は普通のと変わりがありません。
このタイプのオルゴールは2曲が組み込まれていて、1曲についてが2回転するというのが普通です。最初の1回転は装飾のあまり無いプレーンな、2回転目はあるとあらゆる装飾技法で彩られた編曲を演奏してくれます。がこの分野で優れた作品を残しています。シリンダー・オルゴールの頂点(グラン・フォーマットの2倍の価値)とも言うべきもので極めて珍しく、にもあまり出現しません。
残念ながらバリエーション・ボックスの写真をサイト・オーナーは持ち合わせておりませんし、まだ以外に実機を見たこともありません。録音例も私のCDコレクションの中にはありません。残念ながらこの記事は文献だけに頼ったものです。
実例はとサザビーズのオークション・カタログに2回ほど掲載されました。ニコル・フレール社製でが44166と44171という後期のものです。このうち44171は“The Musical Box: A Guide for Collectors” by Arthur W.J.G. Ord-Hume ( Schiffer Publishing Ltd )の172ページに詳しい説明とともに再掲されています。この個体は1曲だけしか演奏しません。シリンダーが6回転する間にいろいろなフォーマットで一つのメロディーを6種類の編曲で聞かせてくれるという贅沢な編成になっています。
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ベニヤ ( veneer )
g063 G0630 掲載 2005/7/17
日本語でベニヤ板といえば何枚(奇数)かの木の薄板を、木目が交差するように糊で張り合わせた合板のことです。高価で扱いにくい(狂いやすい)厚板とは違って、ベニヤ板は安価で強いという特質がありますが安物というイメージは避けられません。ベニヤ( veneer )の本来の意味はベニヤ板( ply wood )の材料になるような薄板(単板と呼ばれています)のことです。
現代では大きな単板( veneer )は熱湯で煮沸した丸太を回転させ、刃物を当てて桂剥き(カツラムキ 日本料理のサイトをご覧ください)の要領で切り取って作られます。現代行われているこの方法は望むような木目が得られないので、の全盛時代には装飾用のベニヤは鋸を使って角材から切り取って作られました。
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左の図のように角材から4枚の薄板を切り取って右下を中心に並べるとクォータリングと呼ばれる模様を作ることができます。この技法はのの正面とかのを収容しておくキャビネットの前面などによく採用されました。
後期に作られた大型のシリンダー・オルゴールのケースは、左上の例のように美しい木目を持った貴重な木材のベニヤで飾られていました。
撮影記録なし。
左下はディスク・オルゴールのビンの正面の装飾です。クォータリングという手法が使われています。
この写真は東京都渋谷区にある川上楽器の好意で撮影したものです。
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ヘリコイダル ( helicoidal )
g063 G0621 掲載 2006/3/15
の型式の一つで、長時間途切れないで演奏を続けられるように考案されたオルゴールです。
シリンダー・オルゴールはが1回転すると隣の列に打ち込まれているが演奏できるように少しだけスライドするようになっています。この動きはを拡大してご覧ください。シリンダーがスライドする短い間は、でピンを損傷しないように、シリンダーの一部分だけピンが植えられていません。そこで必ず曲と曲の間に空白(無音)の時間ができてしまいます。この空白の時間が無いように連続して長時間の演奏ができる3つの方式が考案されました。ヘリコイダル( helicoidal )、( semi-helicoidal )と( plerodienique )です。
ヘリコイダルはピンがシリンダーの表面に螺旋状に植えられています。シリンダーは1回転する間に徐々にスライド(ねじの回転を想像してください)していき、1回転が済んでもそのまま続けて2回転目に入ります。すべての演奏が終わるとシリンダーは櫛歯から後退(櫛歯とピンが干渉しないように)した後で、曲の始まりの部分までスライドして戻されます。この方式は古い様式のに組み込まれている太い木製のバレル(中身の詰まったシリンダー)で古くから採用されていた方式です。
フランソワ・コンション( Francois Conchon )が1878年に最初のヘリコイダルを作ったと伝えられています。アルトゥール・(Arthur Junod)が1896年にこの方式(symplicitasと名付けています)の特許を申請しております。この方式のオルゴールはGrosclaude、Bremond、Cuendet、Jacotによって生産されました。
この方式のオルゴールは生産量が極めて少なく、貴重で高価なものです。日本では東京都文京区にあるオルゴールの小さな博物館に1台と、兵庫県西宮市にある堀江オルゴール博物館に大きなが1台収蔵されています。サイト・オーナーは演奏を聞いたことがありません、演奏を始めてしまうと10分近く続くそうです。
サイト・オーナーはまだこのオルゴールが演奏しているところを見たことがありませんし、写真も手持ちがありません。残念ながらこの記事は文献だけに頼ったものです。
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ペリフェラル・ドライブ ( peripheral drive )
g063 G0622 掲載 2005/5/1
でを回転させる力を伝える方式は2つあります。ディスクの周辺部分に回転する力を伝える方式はペリフェラル(周囲)・ドライブとか、とか呼ばれています。もう一つはディスクの中心に近いところに力を伝える方式でと呼ばれます。
ペリフェラル・ドライブは主として比較的大型(ディスクの直径が概ね14インチ以上)の機種によく使われました。ペリフェラル・ドライブのディスクは写真のようにディスクの端にディスクを駆動する穴(スプロケット・ホール)があけられています。スプリング・モーターの力はスプロケットを回し、スプロケットの突起はスプロケット・ホールに噛み合ってディスクを回転させます。
スプロケット・ホールの形状は特許の関係もあってなのかいろいろな形(四角、長四角ブリタニア、並行四辺形アドラー、長円形フォーチュナ)がありました。スプロケット・ホールを補強するためにディスクの周囲を曲げたりしたもの(ミラ)もありました。これに噛み合うスプロケットも厚い円盤に突起をネジとして植え込んだもの(下記の参照)が標準的な構造でしたが、厚板をプレスで歯車型に打ち抜いた簡単な構造のもの()も作られました。
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ディスクの周囲に1列のスプロケット・ホールが見えます。 スプロケット・ホイールが手前側に回転するとディスクが時計回りに回転します。 矢印の先の長い穴はの特定の型で使用されていたストッパーに使用されるものです。
上記のスプロケット・ホールに噛み合う突起の付いたスプロケット・ホイールが見えます。
共にレジーナ#9 15インチ1/2ディスク・オルゴールです。
あとりえ・こでまり 所蔵
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ベルズ・イン・ビュー ( bells in view )
g063 G0623 掲載 2005/4/19
この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「」G0636の記事を参照してください。その記事の中では赤字でこの用語を表記しています。
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編曲者 アレンジャー ( arranger )
g063 G0624 掲載 2005/11/30
の演奏する音楽の魅力の多くは編曲に由来するものです。同じ名前の曲でもオルゴールのメーカーが異なれば編曲の手法も大きく違います。たとえ原曲がつまらない曲であっても優れた編曲者の手にかかれば面白い音楽に変身することもあります。
オルゴールには技術的な制約が多くあり、100年前に活躍した編曲者はまるでパスルを解くかのように編曲テクニックを駆使して優れた音楽にしなければオルゴールが売れなかったわけです。オルゴールを編曲するためには下記のようなきつい制約を乗り越えねばなりません。 音の持続時間は一定で、一度鳴らすと減衰するだけで長短を後で変更できない。 音の強さは1種類だけなので2本の櫛歯を鳴らすなどの工夫が必要。 曲の長さはオルゴールのサイズによって決められてしまう。 の場合、低音(ディスクの内周)をたくさん鳴らすことが出来ない。 1本の櫛歯で同じ高さの音を短い間隔でたくさん鳴らすことが出来ない。
このような重要な仕事をした編曲者ですが、名前が今まで伝わっているのは極めて僅かです。 “The Music Box Makers” Jean-Claude Piguet著 MBSIによる英語版2004年によればスイスのでの編曲を手掛けた人物としてHenri Giroud、A. BruschiとOctave Felicien Chailletの3名を挙げられています。彼らは教育にも優れた才能を持っていて、音楽教室を開設したりブラスバンドを組織したりして活躍しました。
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Octave Felicien Chailletの写真です。
この中で特にOctave Felicien Chailletは重要な人物です。彼はスイスで音楽教育を受けサントクロワ村でシリンダー・オルゴールの編曲者として活躍していましたが、後にドイツでディスク・オルゴールを最初に作り始めたで編曲を手掛けました。を設立したにスカウトされアメリカに渡りました。彼はグスタフ ブラッフハウゼンがディスク・オルゴールを製造するためにアメリカに設立したで最高給を支給される編曲技術者となりました。彼の娘はグスタフ ブラッフハウゼンの配偶者となりました。
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日本では長らくで編曲者として活躍した田代和夫氏の名前を忘れるわけにはいきません。田代氏は自宅でポリフォン24インチ用ディスクの編曲まで手がけておられます。田代氏の息子さんもの名でいろいろなサイズのディスクを新しく編曲されています。
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ポーター社 ( Porter Music Box Co )
g063 G0625 掲載 2005/12/06
社名 : Porter Music Box Company, Inc. ( ポーター ミュージック ボックス カンパニー ) 所在地 : アメリカのバーモント州ランドルフ( Randolph Vermont )
歴史 : 1974年にドワイト・ポーター氏( Dwight Porter )によって創設され、現在も操業中の・メーカーです。新品の大きなディスク・オルゴールを常時受注できるのは世界中でもここだけでしょう。下記のカタログに掲載されているドラム・テーブルとジャルディニ・ロマーニは最近生産していないようです。新製品として12インチ1/4のを使用する小型のツイン・ディスクが追加されたようです。ポーター社のサイトはここです。
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ポーター社の1985年ごろの総合カタログの表紙です。右側が15インチ1/2のディスクを演奏する代表的なポーター・バロック、中央が12インチ1/4のディスクを演奏するポーター・エリート、左が15インチ1/2のディスクを使うポ−ター・ドラムテーブルです。
出典 カタログ 1985年 表紙
共に15インチのディスクを使用するオルゴールで左がポーター・ツインディスク、右がジャルディニ・ロマーニです。
出典 カタログ 1985年
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得意な分野 : ポーターはおよびと互換性のある中型のディスク・オルゴールを製造しています。構造などはレジーナ社の強い影響を受けています。現在生産されているディスク・オルゴールはディスク・サイズが12インチ1/4のものと15インチ1/2のものがあります。新品なので安心して使える、破損や汚れが全く無い、の狂いが無いというような大きなメリットがあります。ポーター社のサイトに発注することも可能です。
新しいディスク(最近のポピュラーソングも含めて)が次々と新発売になっています。ここのディスクは良く研磨された鏡面仕上の表面に銅メッキが施されていて一目でポーター社製とわかります。以前はレジーナ用の20インチや27インチの大きなディスクもとして生産していましたが現在はやめているようです。
ディスク・オルゴールのほかにポーター社は自社のオルゴールを収録したやカセットテープ、スイス製の小型も販売しています。またショウルームを博物館として公開しています。
以前に日本での輸入代理店(ノア?)があったようですが今では良くわかりません。今ではアメリカにExim International(リンクのペ−ジをご覧ください)という日本人の佐々木さんが経営する会社があり、そこのサイトから日本語で発注することが出来ます。最近佐々木さんからポーター社2004年版の(ののデザインが現行の物と違います)が送られてきました。
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ポリフォン社 ( Polyphon Musikwerke )
g063 G0601 掲載 2005/4/10
ドイツのにあった世界最大のオルゴール・メーカー。のフォアマン(職長?)であった( Gustave Brachhausen )とパウル・リスナー( Paul Riessner )によって1890年頃に設立され、最盛期には1000人以上の従業員を抱えていました。初期は主としてに特化しておりました。のサイズで最小の物は6インチ1/2(16.5cm)から最大の物は24インチ1/2(62.5cm)までいろいろなサイズで生産していました。、大きな時計に組み込んだもの、などのいろいろなタイプが知られています。1920年ごろまでオルゴールを製造していましたが、次第にやなどの生産からタイプライター、自動車など音楽以外の分野のものに力を注ぐようになりました。現在はその直系の会社が音楽関係のプロデュースをする企画会社Polyphon社として残っております。
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ポリフォン社で作られたの代表104型。 ディスク・サイズは19インチ5/8(50cm)で営業用のオルゴールとして大量に作られました。
ポリフォン社で作られたの代表 ディスク・サイズは15インチ5/8(38.5cm)で家庭用のオルゴールとして大量に作られました。
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David BowersののP144〜169にこの項目に関する写真や解説が掲載されていますのでご覧ください。
ディスク・オルゴールの3大メーカーであったドイツのとポリフォン社、アメリカのの大きな関わりを持った人物であるの波乱に富んだ生涯についてはEssay017に詳しく掲載されていますので参照してください。
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ボワ・セレステ ( voix celestes )
g063 G0628 掲載 2005/4/17
フルーティナ・ボックスとも呼ばれます。 の型式の一つで小型のリード・オルガン(というよりもハーモニカ)が組み込まれたものです。シリンダー・オルゴールは優れた音楽を追求する方向とは別に動きの面白さや目新しさを追求する動き()もありましたが、ボワ・セレステだけは音楽的な観点から見ても優れた考案でした。柔らかなオルガン・セクションの音はよほど魅力があったのか、櫛歯を全く持たないボワ・セレステ(サイトオーナーはこのタイプのを大小3台実見しています)も作られました。編曲に対する考え方も櫛歯の音を主体とするもの(初期)と、ボワ・セレステを主体とするもの(後期)に分かれています。ボワ・セレステのムーブメントの断面はを見てください。
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オーケストラ・ボックスのイラストですが櫛歯中央にあるパレットの部分、ベッドプレートの下にある大きな鞴( ふいご ベローズ bellows )と大きなスプリング・モーターに注目。ベッドプレートに立っている3本のレバーを操作するとベル、ドラム、カスタネットの動作を停めることができます。 出典 カタログ・リプリント Heeren Bros. & Co. 1896年P27
上は初期のボワ・セレステでオルガン・パレットが左端に取り付けられています。 この写真はノフ・アンティークス・シェルマンの磯貝氏の好意で撮影したものです。
下は後期のボワ・セレステでオルガン・パレットが中央に取り付けられています。このオルゴールは湿気にやられてオルガン・セクションは全くの黙秘権でした。 この写真は京都のある喫茶店の好意で撮影したものです。
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日本にも多くのボワ・セレステが輸入されていますが、オルガン部分の多くは湿気などにやられて充分に機能していないものが多いようです。鞴の可動部分がパーチメント(やわらかい羊の皮)で作られているためか、ことのほか日本の湿度に弱いようです。パレット部分の摺り合わせや調整も複雑です。シリンダーのオルガン・セクションにはではなくてホッチキスの針のようなピン(ブリッジと呼ばれるようです)が植え込まれていますが、これのはかなり難しい作業です。
このは素晴らしいボワ・セレステの例で、シリンダーの長さが66cm、ケースの幅が145cmもある巨大なです。
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