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ニコル・フレール ( Nicole Frères )
g051 G0502 掲載2005/8/29 : 改訂2 2017/3/11

社名 : Nicole Frères ( ニコル・フレール )
所在地 : スイスのジュネーブ Klèberg 17, Geneva で創立されましたが、後に(1851年より前に)イギリスのロンドンに販売店を開きました。最終的には本店がロンドン、支店がジュネーブという体制になりました。

歴史 : 1815年にPierre-Moise NicoleとDavid-Èlie Nicoleによってオルゴール・メーカーとして創立。進取の気性に富んだ二人の力で1840年ごろにはニコル・フレールは良質のシリンダー・オルゴールの代名詞になりました。1879年までスイスのジュネーヴで操業していて、ニコル・フレール社純正品の製造番号は凡そ48,000までです。代表者の健康悪化に伴い1880年に経営者が交代し、1881年には本社機能が在庫品もろとも当時の市場の中心であったイギリスのロンドンへ移転しました。その後のシリンダー・オルゴールの生産は主としてパイラード社のOEMとなったようで、製造番号は50,000からにリセットされました。

それから事業の内容を拡大しドイツのポリフォン社やアメリカのレジーナ社ディスク・オルゴールディスクも取り扱いました。シリンダー・オルゴールについてはスイスのパイラードやベイカー、レペーなどからムーブメントを購入し、ロンドンでケースに入れてニコル・フレールの刻印を打ち、チューン・シートを貼り付けて販売しました。

蓄音機の時代になってからレコードの生産に失敗したニコル・フレール社は1906年に破産し他の会社(New Polyphon Supply Co)の傘下に入りました。

トレードマークはNFをモノグラムで表現したものです。名村義人氏著「オルゴールの詩」36ページ(Bibliographyの書籍目録90)とArthur W.J.G. Ord-Hume著Schiffer Publishing Ltd.刊行「The Musical Box A Guide for Collectors」(Bibliographyの書籍目録42)の262ページFig.66の#16に掲載されています。

チューン・シート : ニコル・フレール社のチューン・シートはシンプルなデザインのものが多く、多色印刷の絵や模様の入ったものは無かったようです。高価なオルゴールには銀や真鍮の板(プレイク Plaque )に曲名や作曲者を彫刻したものが見られます。チューン・シートのデザイン・サンプルはH.A.V.Bulleid氏の著書“Musical Box TUNE SHEETS” MBSGB刊行(Bibliographyの書籍目録49,50)で見ることができます。ニコル・フレール社はそのチューン・シートに必ず社名と製造番号ガム・ナンバーを記載していました。

生産量と製造番号 : ニコル・フレール社はチューン・シートに製造番号を記載していたので、製造番号と製造年代の対照グラフがイギリスの研究者によって発表されています。今のところH.A.V.Bulleid氏の著書“Musical Box TUNE SHEETS” MBSGB刊行の追録3号58ページに掲載されているチャート11が最も新しい研究成果です。

1814年ごろに最初の生産が始まり、製造番号は1830年ごろに10,000、1840年ごろに20,000、1850年過ぎに30,000に到達しました。ニコル・フレール社が最も優れたオルゴールを作ったのがこの時代でした。1880年ごろに自社生産の製造番号は48,000近くまでになりましたが、その後ロンドンに本拠を移してからはスイスの他のメーカー(主としてパイラード社)から完成品のオルゴールを買ってラベルを貼って販売していました。したがって50,000以上の製造番号(イギリスにおける新しいシリーズ)を持つオルゴールはOEM生産です。初期のチューン・シートにはFrères Nicoleと表示されていましたが、1839年ごろからNicole Frèresと表示されるようになりました。
ニコル・フレール社の典型的なシリンダー・オルゴール
グラン・フォーマット・オーバーチュア・ボックスの例
ニコル・フレール社の典型的なシリンダー・オルゴールです。蓋の裏に取り付けられた青いシンプルなデザインのチューン・シートに注目してください。

撮影記録なし。




グラン・フォーマットオーバーチュア・ボックスの例です。
3インチもある太いシリンダー、数え切れないほどの櫛歯の数に注目してください。

この写真はある個人コレクターの好意で撮影したものです。



得意な分野 : 最も初期にはスナッフ・ボックスが主体でしたが、すぐに優れた中型や大型のシリンダー・オルゴールが主力製品となりました。OEM生産を始めるまではベルや太鼓などの仕掛けなしに櫛歯の音だけで優れた音楽性を追求する作品を世に送っていました。ピアノ・フォルテ・オルゴールを初めて作ったのはニコル・フレール社でした。20,000〜30,000の製造番号を持つニコル・フレール社製のシリンダー・オルゴールは音楽という観点(音質、編曲共に)から優れたオルゴールと言えましょう。ニコル・フレール社が1840年ごろに製造した19167号小形オルゴールの写真演奏です。特に会社の威信をかけて作られていたグラン・フォーマット(シリンダー直径が3インチ=75mm、櫛歯の数が200本をはるかに越える)やオーバーチュア・ボックスはすばらしいものです。

下記は縁が有って私の手元にやってきたニコル・フレール社製小型オルゴールで1840年頃の作品19167号の音です。  ♪ 演奏開始 ♪

2006年になってイギリスのMBSGBからニコル・フレール社の詳細な研究書「The Nicole Factor In Mechanical Music」が発売されました。42曲もの演奏が収録されたCDとコンピューターが読み取れる形でデータが収録されたCDが付録になっています。残念なことにわずか500部の予約出版なので、すぐに入手困難になるでしょう。

このニコル・フレール社は優れたシリンダー・オルゴールを長い間に渡って大量に作った会社で、とてもこの短いGlossaryですべてを語りつくすことはできません、何篇かのEssayでこの会社を取り上げる予定です。


ニューセンチュリー ( New Century )
g051 G0504 掲載 2007/10/14
改訂1 2012/8/22
ニューセンチュリーというディスク・オルゴールは最近の文献によると1902年にアメリカのニュー・ジャージー州Asburyにあったシンフォニオン・マニュファクチュアリング・カンパニー(ドイツにあるシンフォニオン社の子会社)によって作られていました。ヨーロッパ向けはスイスのサントクロワ村にあったペイラード社が、アメリカから輸入したムーブメントをケースに入れて販売していました。アメリカのシンフォニオン・マニュファクチュアリング社は1904年に破産し、同時にニューセンチュリーというブランドのディスク・オルゴールの供給も停まりました。販売されていたのは僅かに1年半程でした。
出典 MBSGB出版Kevin McElhoneのThe Disc Musical Box 2012 p49〜52
ニューセンチュリーのアップライト
ニューセンチュリーのディスクシフター
珍しいニューセンチュリーのアップライト型。2005年のMBSI 日本支部 秋の大会で撮影。いろいろなオルゴールを聞き飽きたような連中でも振り返るほど、素晴らしい音を聞かせてくれました。残念なことに演奏可能なディスクは1枚しか付属していないそうです。

この写真は広島市にある瀬戸内海汽船星ビルの好意で撮影したものです。





ニューセンチュリーのディスク・シフティング・ボックスで、6000シリーズのディスクを使用するもの。

この写真はMBSI 日本支部の個人コレクターの好意で撮影したものです。
ニューセンチュリーの主力商品は下記の4種類の18インチ1/2のディスクを使うものです。
4000シリーズ
一回転1曲演奏でシングル・コームダブル・コームの2種類が作られました。

6000シリーズ
ダブル・コームのディスク・シフティング・ボックスです。このオルゴールでは長い(ディスク2枚分)メロディー1曲(または2曲以上の短いメロディー)が1枚のディスクの上に記録されています。オルゴールが演奏を始めるとセンター・ドームは1曲目を演奏する位置=スプロケット・ホイールに近い方にセットされています。この時は1番目の曲を演奏するプロジェクションスター・ホイールと接触します。1回転目の演奏が終わると、センター・ポストは左に移動し2曲目を演奏する位置にセットされます。今度は2番目の曲を演奏するプロジェクションがスター・ホイールと接触します。78トラック X 2 = 156トラックの音楽信号が6000シリーズのディスク・シフター用ディスクに記録されています。
6000シリーズの演奏、1曲目が「波頭を越えて」、2曲目が「サンタ・ルチア」(クリックすると演奏開始)です。ディスクを取り替えずに2曲を連続して2分52秒間演奏します。これはMBSI 日本支部の個人コレクターの好意で掲載したものです、(C)転載禁止。

7000シリーズ
左右の組の櫛歯が同じ調律(サブライム・ハーモニー)。
7000シリーズの演奏する「ヴェニスの謝肉祭」>(クリックすると演奏開始)です。これはMBSI 日本支部の個人コレクターの行為で掲載したものです、(C)転載禁止。

8000シリーズ
左側の櫛歯が右側の櫛歯(156ノート X 2=312本)と協和音になるように調律されており、より豊かで156ノートの櫛歯の倍の音量があるとされました。ニューセンチュリーの左側櫛歯は低音側の端から1/3ぐらいのところまではサブライム・ハーモニー調律で、その先の中域から高域にかけて全ての櫛歯に鉛のチューニング・ウエイトが取り付けられています。この櫛歯の調律はダブル・デュプレックス・マンドリン・トレモロ・オクタボ ( Double Duplex Mandoline Tremolo Octavo ! )と呼ばれ、エクスプレッション( Expression )というディスクを使用するものです。つまり中音域から高音域に掛けて1オクターブ低く調律されているのです。このような調律はニューセンチュリー独特のもので、心地よい輝かしい音で演奏できます。このディスクは極端に背の低いプロジェクションが極めて密(1枚に312本トラック)に打ち込まれており、リプロダクション・ディスクの製造は困難(一社は失敗)を極めます。

ノート ( Note )
g051 G0501 掲載 2005/4/10

オルゴール櫛歯の歯(の数)。オルゴールのサイズはシリンダーの長さとかディスクの直径で表現される場合が多いのですが、小型オルゴールの場合は櫛歯の数で表現されることがあります。

櫛歯の歯に注目するとその表現はいろいろです
Note  ノート(複数はNotes ノーツ) 音楽用語としての本来の意味は「音符」。
Teeth ティース(単数は Tooth トゥース ) 櫛歯の歯、単数で使われることはあまり無い。
弁   日本のオルゴール・メーカーが櫛歯の歯を振動弁と呼んでいた名残。

このサイトでは櫛歯の歯の呼称をノート(複数でもノート)と表現します。根拠はありません、単にサイト・オーナーの好みです。
リュージュ社製72ノートのシリンダー・オルゴールの櫛歯
リュージュ社製72ノートのシリンダー・オルゴールの櫛歯
このサンプルには72本の歯があります。


日本語   72弁、72ノート
         日本は18ノートクラスの小型オルゴール生産では最近まで世界一でした。

英語     72 teeth(ティース) または72 tongues(タングス)
         イギリスとアメリカはオルゴールの全盛期に最も重要なマーケットでした。

フランス語 72 lames (ラム)
         昔シリンダー・オルゴールを作っていたのはスイスのフランス語圏の人々。



ノヴェルティー・グッズ ( musical novelty goods または musical novelties )
g051 G0503 掲載 2005/6/14

ファンシー・グッズ ( Fancy goods )
シリンダー・オルゴールがスイスのお土産産業として発展していくと、販路を広げるためにいろいろな工夫がなされていきました。当時の人々は毎日使っている日用品に音楽というスパイスを組み込むのが大好きだったようです。
ファンシー・グッズのカタログ
絵の位置を下記のようにします。
一段目    1      2   3


二段目    4   5   6   7



三段目        8   9  10


四段目    11  12  13  14

出典 カタログ・リプリント A. Schellhase P18〜2
ミュージカル・アルバム 絵 1、6、13  アルバムを開くとシリンダー・オルゴールが2曲演奏します。

シンギング・バード 絵2と3  これはオルゴールではありません。ゼンマイ動力で啼いて羽ばたいて嘴を動かします。小鳥(ハミング・バードやナイチンゲール)の鳴声は小さな笛、プランジャー、鞴(フイゴ)で出していました。スイスのリュージュ社によって生産が続けられています。

ミュージカル・マニキュア・セットまたはレディーズ・コンパニオン 絵4

ミュージカル・デカンタ 絵5  持ち上げると2曲演奏します。

ミュージカル・ワーキングボックスまたはレディズ・ネセサリ 絵7  針箱でしょうか。シルク・プラッシ仕上げで2曲付き。

ミュージカル・セービング・バンク 絵8  貯金箱です。コインが煙突から投入されると2曲演奏。幅が11インチ1/2(約30cm)もあります。

ミュージカル・チェア 絵9  座るとオルゴールが2曲演奏。今でも似たデザインで生産が続けられているようです。

ミュージカル・スモーキング・スタンド絵10  当時は今ほどでタバコが目の敵にされなかったようです。

メカニカル・バード・オルガンまたはセリネット 絵11  小鳥に歌を教え込むための小型の手回しオルガンです。

スイス・シャレー(Swiss chalet) 絵12  スイスの山小屋風の家にオルゴールを組み込んだものです。小型の安価なものから、大きな良質のムーブメントを組み込んだものまで作られました。大きなものは屋根を開くとデカンター・セットやスモーキング・セットが収められたりしていました。小型のものは今でもスイスのリュージュ社によって生産が続けられています。

ミュージカル・シガー・テンプル 絵14  ボタンを操作するとオルゴールを演奏が始まり全体が回転しながら扉が開いて、扉のポケットに収められた葉巻を取り出すことができます。現在でも同じデザイン(タバコ用ではなくてスティック・シュガー用)でスイスのリュージュ社によって生産が続けられています。

ミュージカル・ディッシュ  台の付いた菓子皿で、皿を反時計回りに回すとゼンマイが巻き上げられ、手を離すと演奏が始まるものです。現在でもスイスのリュージュ社で生産が続けられております。

ミュージカル・マグ  ビヤ・マグやビヤ・ピッチャーの台座に小型のオルゴールが組み込まれていて持ち上げると演奏が始まるものです。今でも作り続けられております。

ミュージカル・インクスタンド  100年前には手紙を書く以外に通信手段がありませんでした。当時の識字階級の家庭にはしゃれたデザインのインク・スタンドやラップ・デスクが普及していました。

ミュージカル・クリスマスツリー・スタンド  台の上にクリスマスツリーの幹を差し込んで固定する円筒が付いており、スタートさせるとディスク・オルゴールの演奏が始まると同時にクリスマスツリーが回転を始めるものです。カリオペ社からグロリオサ(Gloriosa)のブランドで販売されたものが有名です。小型でシリンダー・オルゴールを組み込んだものが今でもスイスのリュージュ社によって生産が続けられています。

ミュージカル・ドアチャイム  現代のリュージュ社のカタログに電動式のオルゴールによるドアチャイムが掲載されています。

トイレット・ペーパー・ホルダー  これには驚きました。紙を引っ張り出すとオルゴールが鳴るそうです。現行商品です。

このほかにもキーホルダー、宝石箱、シガレット・ケース、杖、時計、シール(封蝋用の印章)などなどキリがありません。