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田代音楽工房
G0407
ただ今執筆中です。メールで督促していただきましたら、この項目のUpLoadを急ぎます。
イギリス Oxford from Beadington Hillの風景を掲載しています。

タワー・カリヨン ( tower carillon )
g041 G0402 掲載 2005/4/10 改訂1 2008/6/11

ヨーロッパの教会には尖塔(高い塔)がつきものです。天国に近いところというわけで高く作られたのでしょう。1700年ごろにフランドル地方で複数の鐘を組み合わせて簡単な音楽を演奏するようになりました。その規模は町と町との競争となり規模が大きくなっていきました。大きなものでは50個以上の鐘を組み合わせて、演奏の専門家(チェンジリンガーまたはカリヨネア)の演奏やシリンダー・オルゴールに似た大きな自動演奏装置(シリンダーの直径が3メートル近いもの)でかなり複雑な音楽を演奏できました。その演奏はCDで聴くことができます( BibriographyのUKV UTRECHT #RCD-U13 )です。
広場に面している教会堂の尖塔上部にタワー・カリヨン
シリンダーと手動演奏コンソール
広場に面している教会堂の尖塔上部にタワー・カリヨンは設置されています。

出典 "Mechanical Music Instruments" Alexander Buchner著
   Altea Czechoslovakia 1954年 Plate8-9,5,15,10



尖塔上部に設置されているカリヨン(鐘)です。ワイヤーは尖塔の下部に設置されている自動演奏装置や鍵盤につながっています。






自動演奏をするときに使うシリンダーがワイヤーの奥に見えます。ピンはワイヤーを引っ張って鐘を鳴らします。
この写真はハウステンボスのカロヨン・シンフォニカの好意で撮影したものです。


 

自動演奏をしないときは写真のような鍵盤を手(こぶし)で叩き、ペダル鍵盤を足で踏んで演奏します。
この写真はハウステンボスのカロヨン・シンフォニカの好意で撮影したものです。
日本でもハウステンボスの技術部や株式会社カリヨンセンターというところが輸入販売をしています。

ダンパー ( damper )
g041 G0404 掲載 2005/4/10 改訂1 2014/6/6

この部品の形状や位置などについてはイラストG0051櫛歯イラストG0056ディスク・オルゴールをご覧ください。
オルゴールで今鳴っている櫛歯(つまり振動中の)にピンシリンダー・オルゴールの場合)やスターホイールディスク・オルゴールの場合)が接触したら、櫛歯の先端とピンやスターホイ−ルの先端が短い間隔で接触したり離れたりして不愉快な雑音(ギャーッとかジーッとか)を出してしまいます。それを避けるには鳴らす寸前にいったん櫛歯の振動を停めてしまえばいいわけです。

大型シリンダー・オルゴールの場合はワイヤー・ダンパーが使われます。櫛歯の裏側にダンパー・アンビルという太くなったところがあって、そこに小さな穴を開けて弾力のあるワイヤーをペグ(釘のようなもの)で押し込み図のように曲げておきます。ピンが櫛歯に接近すると先ずワイヤー・ダンパーにピンが触れ櫛歯の振動をソフトに停めてしまいます。そのすぐ後でピンは櫛歯を持ち上げて離してクリアーな音を出します。小型のシリンダー・オルゴールの場合はワイヤーの代わりに水鳥の羽の一部を切り取って櫛歯の裏側に糊で接着したキル・ダンパー( quill damper )とかフェザー・ダンパー( feather damper )と呼ばれるものが用いられています。
ワイヤー・ダンパーとフェザー・ダンパー
Plyphon104型ディスク・オルゴールの櫛歯とダンパー
櫛歯の断面図
大型シリンダー・オルゴールではワイヤー・ダンパーが櫛歯の下側のダンパー・アンビルにペグとともに打ち込まれています。図ではワイヤー・ダンパーがピンに最初ノ接触しかけているところを表示しています。
小型シリンダー・オルゴールでは水鳥の羽で図の白い部分を切り取って櫛歯の裏側に糊で接着してダンパーとします。これをキル・ダンパー( quill damper )とかフェザー・ダンパー( feather damper )と呼びます。

ポリフォン104型ディスク・オルゴールの櫛歯とダンパー。
左より櫛歯、ロワー・ダンパー・レール、アッパーダンパー・レール、櫛歯。ダンパーは左の写真のようにダンパーレールに櫛歯の歯の数だけ半田付けされています。

ポリフォン104型ディスク・オルゴール(櫛歯が2個ついている)のダンパー。左2本はアッパーダンパー( upper damper )で上側の櫛歯に使用し、右2本はロワー・ダンパー( lower damper )で下側の櫛歯に使用します。長さは約24mm。これはリストア作業で使用した補修用の新品です。

ディスク・オルゴールでは薄い真鍮の板でできたダンパーを使います。イラストG0056ディスク・オルゴールを見てください、ダンパーは中央スターホイールの左右にあります。ディスクプロジェクションに押されて回転するスターホイールが櫛歯に接触する前にダンパーの中ほどにある突起に接触して、ダンパー全体を櫛歯の横に押し付けて櫛歯の振動を停めてしまい、その後すぐにダンパーは櫛歯から離れます。それからスターホイールが櫛歯を持ち上げて離してクリアーな音を出します。音が出たらスターホイールはブレーキによってそれ以上の余計な回転を停められ、次にダンパーを働かせなければならないときまで待機状態になります。

蓄音器 ( phonograph )
g041 G0403 掲載 2005/4/10

エジソンによって1877/12/6(これに因んで「音の日」だそうです)に発明された音を記録する機械です。オルゴールのように音楽を積極的に作ろうとした機械ではなくて、実際に鳴っている音楽を受動的に記録するという本質的な違いがあります。オルゴールはこの蓄音器のために滅ぼされてしまいました。蓄音器からは人の声が聞こえてきたからでしょう。

蓄音器にもシリンダー型とディスク型があり、オルゴールと同じようにシリンダー型がディスク型に駆逐されました。オルゴールのメーカーも蓄音器との競争に負けまいとしてオルゴールと蓄音器の兼用機を作りました。ポリフォン社のポリグラフォン( Polygraphon )、レジーナ社のレジーナフォン( Reginaphon )などが有名です。最後にオルゴール・メーカーが蓄音器メーカーになってしまったケースが多いようです。
シリンダー型蓄音器
蓄音器兼用のディスク・オルゴール
シリンダー型蓄音器の例
エジソン ホーム・フォノグラフ
記録媒体は蝋管(ワックス・シリンダー)




蓄音器兼用のディスク・オルゴール
レジーナフォン
記録媒体は円盤型レコード

ポリフォン社とレジーナ社を育てたグスタフ・ブラッフハウゼンと蓄音器の改良をした技術者との間に興味深い接点がありました。詳しくはEssay017グスタフ・ブラッフハウゼン 波乱の生涯をご覧ください。

チター・アタッチメント ( zither attachment )
g041 G0408 掲載 2005/4/17 改訂1 2005/11/29

後期のシリンダー・オルゴールによく取り付けられていた付属品です。例は少ないのですがディスク・オルゴールにも取り付けられていました。構造は薄い紙を筒状に巻いたものを櫛歯に接触させるだけです。チターの中央にあるネジを回したりして紙の筒を櫛歯に接触させるようになっていました。薄い紙の筒が櫛歯に接触したまま演奏するとザーッザーッというような雑音に近い音を伴った音(ギターやリュートの音に近い)が出てきます。普通のオルゴールでも薄い紙を曲げて櫛歯に軽く接触させればほぼ同じ効果が得られますので実験してみてください。チター・アタッチメントを操作してみるとそれなりに面白いものなのですが、音楽的な観点からはあまり感心したものではないと思えます。

当時はアタッチメントと呼ばれるように、通常はオプション部品として販売されていたようです。チター・アタッチメントなしで購入したオルゴールに、別売りのチター・アタッチメントを買って追加することもできました。
チター・アタッチメント

櫛歯の上にかぶさっているのがチター・アタッチメントです。中央のノブを操作するとチター・アタッチメントの薄紙を巻いたものが櫛歯に接触して独特の音を出すようになります。
この写真はノフ・アンティークス・シェルマンの磯貝氏の好意で撮影したものです。



ポリフォン24インチという大型ディスク・オルゴールに取り付けられたチター・アタッチメントです。右側のレバーでオン・オフが出来ます。
この写真はある個人コレクターの好意で撮影したものです。

 
チター・アタッチメントを下げたまま(薄紙の筒を櫛歯に接触させたまま)放置すると、紙が湿気を呼んで櫛歯を錆びさせることになります。演奏が終われば必ずチター・アタッチメントを上げておきましょう。

チップ ( chip )
g041 G0409 掲載 2005/4/16

この部品の形状や位置などについはイラストG0051櫛歯をご覧ください。
初期のシリンダー・オルゴール櫛歯の先端は、櫛歯の素材と一体でした。1曲しか演奏できないタイプのものは素材を切り離しただけで先端は四角いまま(図1)でした。シリンダーを横方向にずらせて2曲演奏できるタイプのものになると櫛歯の先端は欠き取られて(図2,3)演奏していないピンを避けて通過できるようになりました。曲数が増えると櫛歯の先端が尖った形(図4)をとるようになりました。最終的に先端に尖った部分品(チップ)を半田付けするようになりました(図5)。ただし高音部は音を高くするために櫛歯の重さを軽くしなければならないので当初から細く尖った形をしていました。

櫛歯先端の形状の変化
櫛歯のチップ
櫛歯先端の形状の変化





櫛歯のチップ
出典 How To Repair Musical Box リプリント
Jacot & Son 1883年 P9


修理の技術的な詳細はArthur W.J.G. Ord-Hume氏の著書 “Restoring Musical Boxes & Musical Clocks” ( Mayfield Books 1997年) のP46〜47に詳しく記述されています。



チューニング・ウエイト ( tuning weight )
g041 G0405 掲載 2005/4/10

レゾネーター ( Resonator )
この部品の形状や位置などについはイラストG0051櫛歯をご覧ください。
櫛歯の裏側に取り付けられた鉛の錘のことです。24インチのディスクを演奏する大型のディスク・オルゴールであるポリフォン105型の最低音はG1で49ヘルツ、ピアノの鍵盤では最低音から11番目という低い音です。櫛歯だけで低い音を出すためには長い櫛歯が必要です。櫛歯の写真を見ていただければわかるように櫛歯は狭いスペースに収容しなければなりません。ポリフォン105型の最低音の波長は7m近くあります、最高音はB7で波長は9cm弱です。最低音の櫛歯の長さは最高音の櫛歯の長さの3倍もありません。

低い音を短い櫛歯で出すためは長い櫛歯を折り畳んで櫛歯の下側に下げた形にすればよいわけです。そこで折りたたむ替わりに鉛でできた錘(チューニング・ウエイトまたはレゾネーター)を半田付けすることになりました。実際の作業は大きな鉛の塊を櫛歯の下に半田付けし、切れ目を入れて櫛歯毎に分離するという方法をとっていました。低い音の調律はこの鉛の錘を切り取ることによって音を上げて行われました。

古いオルゴールのチューニング・ウエイトは空気中の酸素と化合(つまり錆びて)して白い粉になっているものがあります。ひどい場合はチューニング・ウエイト全部が櫛歯の下に落ちて小麦粉のような白い粉の山になっている場合もあります。この現象は特にステラに良く見られます。半田で錘を補充したり新しい錘を取り付けたりして、参考書の調律表(誤りもあります)を見ながら調律のやり直しをやらねばなりません。

櫛歯の下側にチューニング・ウエイトが取り付けられている
裏返しにしたPlyphon104型ディスク・オルゴールの櫛歯
櫛歯の下側にチューニング・ウエイトが取り付けられています。





Plyphon104型ディスク・オルゴールの櫛歯。裏返しに置いてあるので櫛歯の裏側に取り付けられたチューニング・ウエイトが良く見えます。手前のほうが低い音を出す櫛歯で、大きな鉛のチューニング・ウエイト(表面が白く錆びている)に注目してください。



チューン・インジケーター ( tune indicater )
g041 G0410 掲載 2005/6/15

シリンダー・オルゴールが今何番目の曲を演奏しているかを表示する装置です。チューン・カードとこの装置で今演奏されている曲の名前がわかります。

チューン・インジケーターは下の写真でドラム(太鼓)の前に見えている竪琴形のものです。曲目の番号を針が指示(写真では今1曲目を指示しています)するようになっています。指示針の根元には梃子(シリンダーに繋がっている)が繋がれております。曲目変換装置(G0052シリンダー・オルゴールの曲目変更をご覧になってください)がシリンダーを動かしたときに、その小さな動きを梃子が拡大してチューン・インジケーターに伝えています。
チューン・インジケーター
ドラム(太鼓)の前に見えている竪琴形のものがチューン・インジケーターの目盛部分で、1〜12(12曲分)の番号が刻印されています。指示針は今1番目を指しています。
シリンダーが1曲分右に動くと、指示針が右へ1目盛だけ動いて2番目を指します。
この写真はある個人コレクターの好意で撮影したものです。


チューン・インジケーターは通常シリンダーの後方中央に設置されているものが多いようです。指示針で示す方法が一般的ですが、中には曲目が記入された円筒をまわして曲名を見せるものも作られました。

チューン・シート、チューン・カード ( tune sheet, tune card )
g041 G0411 掲載 2005/4/16 改訂2 2008/9/18

シリンダー・オルゴールの蓋の裏に貼り付け(通常は真鍮のピンで留められている)られた曲目を書いたラベルのことです。初期にはシンプルなデザインの枠が印刷されていただけでしたが凝ったイラストが加わり、石版刷りの多色印刷( Multi Color 1880年代に実用化されました)のものまで作られました。通常は厚い紙( Buff Card )に枠が印刷され、曲目は独特の書体(大変読みにくい)で手書(女性の手になるものが多いそうです)のインクで記入されています。フランス語圏の人々が書いたためか英文のチューン・シートにはスペリングの誤りが散見されます。ニコル・フレール社のように独自のデザインをずっと通した会社もありますが、OEMでム-ブメントだけを作っていた小さな工房などでは既製のチューン・シートを工房同士で相互に融通しあっていたようです。

インターチェンジアブル・シリンダー・オルゴールでは、冊子の形をしたチューン・シートが添付されていたり何枚ものチューン・シートが蓋の裏に並べてピン留めされていたりしました。特別に高価なオルゴールでは銀や真鍮の板に曲目が彫刻されていたものもあります。

すべてのチューン・シートに記載されているのは曲数( 6曲=6 airs )、曲名と作曲者です。当時オルゴールはOEM生産(販売店の作ったチューン・カードもありました)することも多く、メーカーの名前が記載されていないものも多いです。記載されているメーカー名もモノグラムや商標だけで間接的に表現される場合が多いようです。製造番号やガム・ナンバー、そのオルゴールの特長(サブライム・ハーモニーとか)もよく記載されていました。

チューン・シートは紙製が一般的なので、古くなるともろくなって破損したり失われていたり(今では残存しているシリンダー・オルゴール総数の半分近くに及ぶのではないでしょうか)する場合が多いです。リプロダクションのチューン・シート(曲目部分は白紙)がニューヨークのNancy Fratti Music Boxesから発売(そこのカタログによれば85種類)されています。このサイトのトップページはレペー( L'Epèe )社のチューン・シートを複写したものです。
ニコル・フレール社製ピアノフォルテ・シリンダー・オルゴールのチューン・シート
“Musical Box Tune Sheets” MBSGB刊
ニコル・フレール社製ピアノフォルテ・シリンダー・オルゴールのチューン・シートが蓋の裏にピン留めされています。チューン・シートのシンプルな青色のデザインはニコル・フレール社の典型的なものです。
ファミリア 坂野コレクション






左はH.A.V. Bulleid氏著 “Musical Box Tune Sheets” MBSGB刊
その中で216種類(No.1〜216)のチューン・シートが写真と共に解説されています。

この書籍には詳細な追録“Musical Box Tune Sheet Supplement”が3冊発行されています。追録の1はモノクロ印刷で34種類(No.217〜250)、追録の2は70種類(No.251〜320)、追録の3はカラー印刷で80種類(No.321〜400)のチューン・シートが写真と共に解説されています。

チューン・シートの取り扱いに関する技術的な詳細はArthur W.J.G. Ord-Hume氏の著書 “Restoring Musical Boxes & Musical Clocks” ( Mayfield Books 1997年) のP84〜85に詳しく記述されています。