g014 G0138 掲載 2005/7/20
このオルガネットに関してサイト・オーナーはEssayにまとめるほどの知識がありませんが、の開発に大きな影響を与えたという観点で書いてみましょう。
高価なを買えない一般の市民階級を相手に1876年にドイツのライプチッヒでパウル・エーリッヒ( Paul Ehrich )がフリー・リード(ハーモニウムやリード・オルガンのサイトを参照)を手回しのクランクで動かす鞴(ふいご)から発生する空気で鳴らす自動演奏楽器をアリストン・オルガネット( Ariston Organette )と名付けて売り出しました。音楽の演奏を制御する信号はオレンジ色に着色された丸いボール紙のディスクに明けた小さな四角い穴の形で記録されていました。
アリストン・オルガネットは24ノートで直径33cmのディスクを使うものが最も一般的で、楽器の大きさは42X42X24cmから47X47X28cmでした。アリストンはボール紙製のソフトが豊富(レパートリーは世界中のいろいろな曲を4000曲以上)で安価であったために爆発的に売れました、1884年から1902年までの間にいろいろなモデルが47万台以上!売られています。
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アリストンのオルガネットの写真が見当たらないので、当時作られていたよく似たヘロフォンに代役を務めてもらいます。
この写真はこの写真は静岡県伊豆市にある伊豆オルゴール博物館の好意で撮影したものです。
アリストン・オルガネットの写真を撮影できましたので追加します。
この写真は神戸市六甲山にあるホール・オブ・ホールズ六甲の好意で撮影したものです。
イギリスので出版されているオルガネットの研究書です。417ページもあり、オルガネットの研究では決定版と言うべきものでしょう。このページ数はいかにたくさんのオルガネットが多くの会社で作られたかを物語っています。メーカー名、メディアのサイズ、のソフトの入手先なども掲載されています。
裏表紙には代表的なオルガネットの写真が掲載されております。
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アリストン・オルガネットの音はキングレコードのアンティーク・オルゴールと自動オルガンの饗宴”Spieldosen & Drehorgel-Klange”(270E 13)というCDで聞くことができます。アリストン・オルガネットとオルフェウス・チター(同時代に売られていた自動チター)はディスクの互換性がありました。このCDではまったく性格の違う両者の音を聞き比べることができます。
アリストンの丸いディスクが回転しながら音楽を演奏するメカニズムから、ディスク・オルゴールが考案されたようです。またアリストン・オルガネットを売り出したパウル・エーリッヒも後年(1890年〜1900年)モノポール社( Monopol )を設立してディスク・オルゴールのビジネスに進出しました。
ヨーロッパでは音楽ソフトは紙のディスク(丸いもの、四角いもの)やロール(長いもの、両端がつながれたエンドレスの輪)、ブック(ボール紙を扇子のように交互に折り畳んだもの)などの形態を採っていました。アメリカではこの方式のほかにコブ( Cob )と呼ばれる木製の円柱に釘が打たれたもの(シリンダー・オルゴールのシリンダーに似ている)が使われたジェム・ローラー・オルガン( Gem Roller Organ )が大量に販売されていました。
面白いことに日本でもペーパー・ロールを使う国産のオルガネット「」が明治時代に東京の十字屋から発売されていました。これは東京都文京区にあるオルゴールの小さな博物館と静岡県伊豆市にある伊豆オルゴール博物館で実物を見ることができます。
同じ原理でハーモニカ、アコーディオン、トランペットの中にオルガネットのメカニズムを組み込んだものも作られていました。David BowersののP739〜775にこの項目に関する写真や解説が掲載されていますのでご覧ください。
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