<< HOME

オートマータ ( automata )
g013 G0122 掲載 2005/7/8

オートマータ(自動人形)はそれだけで一つの大きな世界を形成しており、膨大な研究がなされています。日本にも専門の博物館やアンティーク・ディーラーがあります。サイト・オーナーはどうも人形の面白さがわからない上に見聞したものも極めて少ないので、簡単に概略を述べるだけにとどめましょう。

人形の起源は人類の呪術とともに超古代から始まったようですが、ゼンマイを利用した部屋に置ける程度の大きさで動きのある人形は18世紀ごろまで作れなかったようです。その当時の有名な作品はフランス人ジャック・ヴォーカンソンによる「餌を食べるアヒル」がよく知られています。スイスのヌーシャテルにある美術・歴史博物館にはジャケ・ドローの制作になる有名な2体のオートマータ(そこではアンドロイドと呼んでいます)が収蔵されております。一つはカムの機械的な制御だけで手を動かしてマリーアントワネットの横顔などを描く「書記」と呼ばれている可愛い子供の人形で、もう一つは小型のオルガンの鍵盤をカムで制御された両手の指を使って演奏する美しい女性の人形です。
書記のレプリカが描いた2枚の絵(ルイ15世の横顔と犬)
お化粧をするオートマータとバイオリンの演奏をするオートマータ
これは京都市右京区にある京都嵐山オルゴール博物館が収蔵している書記の自動人形(アンドロイド)のレプリカが描いた2枚の絵(ルイ15世の横顔と犬)です。絵の大きさは10cm X 7cmで専用の特殊なシャープペンシルを使って描いています。1997年フランソワ・ジュノーの作品です。
この絵は京都市右京区にある京都嵐山オルゴール博物館の好意で書記の自動人形がサイト・オーナーの目の前で描いたものを特別にいただきました。





左はオルゴールの演奏が始まると小さな手鏡を見ながらお化粧をする仕草のオートマータ(自動人形)です。シリンダー・オルゴールは足元の丸いベースに組み込まれています。

右はオルゴールの演奏が始まるとバイオリンの演奏をする仕草のオートマータ(自動人形)です。シリンダー・オルゴールは腰掛けている箱に組み込まれています。

ともにこの写真はノフ・アンティークス・シェルマンの磯貝氏の好意で撮影したものです。
上の写真は19世紀中ごろからたくさん作られたオートマータの例です。ビクトリア時代の装飾過剰なお屋敷の応接室などに置かれてお客様を楽しませていたようです。制作したのは主にフランスの工房でビシー、ランベール、ダカンなどが知られています。またこれらを少し小さくしたものが現在でもリュージュ社から発売されています。このようなオートマータに組み込まれているオルゴールは、サイト・オーナーの見聞からは残念ながら小さなものばかりで音楽的に語りかけてくれるものはありませんでした。

日本でも手の込んだ「からくり人形」が江戸時代に作られましたが、音楽を組み込むことはできなかったようです。日本の音楽は口伝で伝承されるものであって、記号として表現できない(五線譜にはならない)性格を持っていたためでしょう。

David BowersのエンサイクロペディアのP73〜82にこの項目に関する写真や解説が掲載されていますのでご覧ください。

オートマチック・ディスク・チェンジ ( automatic disc changer )
g013 G0123 掲載 2005/5/3 改訂1 2006/6/9

コイン・オペレートアップライト型オルゴールはパブなどで営業用によく使われていました。パブのオーナーが接客中に曲目を替えるのは面倒だったのでしょう。お客が自分で曲目を替えることができるシステムが望まれていました。オート・チェンジャーを手がけたのは主としてポリフォン社レジーナ社でした。シンフォニオン社は試作の域を出なかったようです。当時は電気モーターがまだ使えなかったので、全てスプリング・モーターの力によって動作しました。

ポリフォン社は19インチ22インチベル付き、24インチと3種類ありました。

レジーナ社は15インチ、20インチ、27インチの3種類を数多く作りました。15インチは最もたくさん作られ、ケースの前面が丸いもの(下の写真)とフラットなケースに入ったもの、食器棚に組み込まれたものなどがありました。20インチは15インチをそのまま拡大した様式のケースと27インチ用のケースを縮小したものとがありました。レジーナのオート・チェンジャーは今でも常にアンティーク市場に流通しているほど多く作られていました。

レジーナ社製 Regina Corona No.38とその内部
シンフォニオン社製とポリフォン社製のオート・チェンジャー
レジーナ社製 Regina Corona No.38とその内部機構
サイズ 高168cm 幅66cm 奥行56cm 15インチ ディスク
デザインがほとんど同じでディスクサイズを20インチに拡大したものも作られました。

左は珍しいシンフォニオン社製オート・チェンジャー
この写真は長野県下諏訪にある諏訪湖オルゴール博物館奏鳴館の好意で撮影したものです。

右はポリフォン社製22インチ ディスクでベル付きのオート・チェンジャー。この写真にようにユーゲント・シュティール様式のケースに収められているものが多いです。
この写真は京都市右京区にある京都嵐山オルゴール博物館の好意で撮影したものです。


シンフォニオン社ではテーブル・トップ型小型オート・チェンジャーが開発されました。コイン・メカニズムを持っていなかったので家庭用のマーケットを狙ったものだと思われます。量産はされなかったようで残っているものも極めて僅か(多分2台のみ)です。これは東京都目白区にある「オルゴールの小さな博物館」で「館長コース」に参加すると見ることができます。

オーバーチュア・ボックス ( overture box )
g013 G0131 掲載 2006/3/18

シリンダー・オルゴールの型式の一つで、オペラの序曲だけを演奏するオルゴールに付けられた名前です。

序曲(オーバーチュア overture )はそのオペラの中で演奏される主要旋律を織り込んで、内容を暗示させるものに発展してきました。オペラは当時の娯楽の頂点であり、現代のテレビのテーマ音楽のような位置を占めていました。

オーバーチュア・ボックスは直径の大きなシリンダー(2インチから3インチ=50mm〜75mm)と極めて細い歯をたくさん(200本〜300本)並べた長い櫛歯を持ち、手の込んだパーケットリークロス・バンディングが施された素晴らしいケースに納められています。チューン・カードも紙に印刷されてカードではなくて、真鍮や銀の板に曲名や作曲者の名前が彫刻されたものがよく見られます。オペラの序曲を元のスコアどおりに忠実に演奏できます。各々の櫛歯が細いために音量は小さいけれども澄み切った柔らかな音を出すのが特徴です。
オーバーチュア・ボックスの櫛歯
オーバーチュア・ボックスのケース
300本近い細い歯を持つ長い櫛歯と夥しい数のピンに注目してください。
この写真はある個人コレクターの好意で撮影したものです。










典型的なオーバーチュア・ボックスのケース、手の込んだパーケットリーが施されています。


優れたを作ったメーカーとしてルクルトニコル、Falconnet、Bremondなどの名前が挙げられます。オーバーチュア・ボックスはどのメーカーも自社の威信をかけて作りましたので、いつの時代のものでも素晴らしい作品です。ニコル・フレール社のオルゴールはシリアル番号が20000台の初期に作られたものが優れていると言われていますが、オーバーチュア・ボックスでは40000台の後期のもの(ほとんどがOEM生産と推定される)でも素晴らしい作品です。

サイト・オーナーはかなり前にあるアンティーク・ショップの店頭で優れた4曲入りのオーバーチュア・ボックスを聞く機会に恵まれました。1メートル近い長い見事なケースに納められていて、300本近い櫛歯が次々と岸辺に押し寄せる漣のように揺れ動いて演奏するのを見て感激しました。でも500万円以上でしたので縁がないと簡単に諦めが付いたのを覚えております。

Bibliography → 「CD,ビデオ、レコードカタログ」 → 一覧表の47番、オルゴールの小さな博物館が1991年に発売したOR-3207のCD「Opera」には素晴らしいオーバーチュア・ボックスのサンプルが収録されていましたが、残念ながらはその博物館は閉館となっています。

こちらの動画は素晴らしいニコル・フレール製3曲入りオーバーチュア・ボックスです。

オーバーライディング・デバイス ( over-riding device )
g013 G0124 掲載 2005/7/19

たいていのコイン・オペレートの大型ディスク・オルゴールには、コインを使わないで演奏できるシステムが付属しています。オルゴールのオーナーであるパブの亭主などがお客に音楽を奢ろうとする時に、このオーバーライディング・ディバイスを操作してコインなしで演奏を始めることができます。

オーバーライディング・ディバイスは下の写真のように木材のブロックの摩擦で任意の位置で固定できる金属の丸棒です。オルゴールのケースの外側から小型のキー(たいていの場合紛失していて、付いていません)を差し込んで金属の棒を回し、コイン・メカニズムのバランス・アームを下げて強制的に演奏を始めるものです。
オーバーライディング・ディバイス
ケースから取り出したオーバーライディング・ディバイス
オーバーライディング・ディバイスの金属の棒と木材のブロック(割れている)に注目してください。







 
ケースから取り出したオーバーライディング・ディバイスです。キーは失われていました。
「あとりえ・こでまり」にて修復中に撮影


オルガニート140 ( Organette 140 )
g013 G0125 掲載 2005/9/1 改訂1 2012/11/27

1977年頃に三協精機製作所で巾の広いペーパーロールを記録媒体としたオルゴール「オルガニート140」が4名のチームの手で開発されました。その1号機のケース裏側には「オルガニート140第1号機 製作年月日昭和52年9月26日株式会社三協精機製作所」と記されています。櫛歯の数は70ノートが2組(多分サブライム・ハーモニー)で合計140ノート、音域は6オクターブ弱。当時の三協精機製作所の主力商品であった18ノートの櫛歯を持つ小さなオルゴールとは比較にならない優れた機械でした。そのライバルはアンティークディスク・オルゴールでしょう。しかし高価なためか販売の面では良い成績を上げられず、製作に携わった技術者の証言では8台というごく僅かな生産量(その内の6台は所在が分かるそうです)にとどまったようです。

現在公開されている3台のオルガニート140の内2台は地元の長野県諏訪市にあって、博物館「奏鳴館」と近隣の諏訪郡原村にある博物館に収蔵されています。2012/5/26に奏鳴館を訪問したら2台おいてありました、どうも原村のもののようです。2005年の春、MBSI日本支部のミーティングが北海道の小樽市で開催されましたが、そこの小樽オルゴール堂で1台見つけました。どれも三協精機製作所の技術者の方が予想していたとおり、ゴム系、プラスチック系の部品が経年劣化して演奏できない状態にあります。奏鳴館でも小樽オルゴール堂でも現在そこに勤務している職員の方で演奏を聞いた人はいないし、演奏用のソフトとなるペーパーロールも失われているようです。このような状況から推測して日本中に販売された残りのオルガニート140もそろそろ寿命を迎えて廃棄処分される可能性が高まっております。
オルガニート140
オルガニート140のムーブメント
諏訪市の奏鳴館に収蔵されているオルガニート140です。外見はリードオルガンにそっくりです。ムーブメントは薄くて小さく、上段の幅1/3の部分に収容されています。そのほかの部分はすべて共鳴箱です。








櫛歯の部分をクローズアップしました。写真で見られるとおり、ムーブメントの部分は、極めてコンパクトにできています。

この写真は長野県下諏訪にある諏訪湖オルゴール博物館奏鳴館の好意で撮影したものです。


オルガニート140は櫛歯が70組140本あるので編曲の仕方によってはもっともっと可能性が見込めるオルゴールです。オルガニート140は普通のディスク・オルゴールと違い、低音部分の音の数に技術的な制約がなく、曲の長さも自由です。編曲支援ソフトを開発してコンピューターを使えば編曲作業も当時と比べて飛躍的にやりやすくなっています。オルガニート140は日本が世界に誇る大型オルゴールではないでしょうか。しかも日本以外ではその存在を知る人はとても少ないようです。オルガニート140の演奏は次のCDで聴くことができますが、今となってはすべて廃盤です。
テイチク TECD-25031 BibliographyのP4 Music Box of Flowers
テイチク TECD-25032 BibliographyのP4 Music Box of Rainbow
CBSソニー 38DG5 BibliographyのP4 Musical Box の最後のトラック

この中でCBSソニーのCDの最後のトラックに収録されているワイマン作曲「銀波」はすばらしい編曲です。残念なことに曲の前半分しか収録されていません。編曲をしたMBSI日本支部の田代さんに聞くと「後半部分も力を入れたのに残念です。」とのコメントがありました。銀波はピアノを勉強している人が発表会で容易に演奏できるように、ピアノ教師をしていたワイマンが特別に初心者用に作曲したものです。ピアノで聞くとこんなに退屈な曲とは思いませんでした。

但し開発担当の方の証言によるとオルガニート140のパンチは孔の位置がとても厳密な上に孔の数が大変多く、「二度とやりたくない仕事だ」と言っておられました。

ごく最近(2006年夏)オルガニート140が1台リストアされたようです。「お買いになりませんか?」という話がありましたが、サイト・オーナーの財布ではムリだったので泣く泣くあきらめました。どこかの博物館が買って公開してくれればファンもうれしいですし、そのオルゴールも喜ぶことでしょうが。多分その機械は世界で唯一演奏可能なオルガニート140で、現在は松本市内在住の技術者の手許で保管されているはずです。

オルガニート20 ( Organette 20 )
g013 G0126 掲載 2005/6/15 改訂1 2008/10/3 改訂3 2010/1/7

細長い紙の帯に音楽を記録するタイプのオルゴールが三協精機によって昭和45年ごろに開発され、リズミカという名前で販売されました。どうも奏鳴館に収蔵されている100年ほど昔に作られたリベリオン(Libellion)の影響があると思いますがいかがでしょうか。ペーパーロールを音楽の記録媒体として採用したオルゴールはこのほかにレプケ?(Roepke)、ウニコン?(Unikon)、アルノ(Arno)などが知られております。リベリオンはホールクロックの形をした大きなアップライト型も生産したようです。

リズミカは電動式でしたが、マニベル(クランクによる手動式)として機構を簡単にしたものがオルガニート20としていろいろなケースに収められて発売されました。音の数は白鍵のみ(#と♭は鳴らせない)の20音で、オルゴールのように同じ音を複数持つということはありません。後に30音と15音のオルガニートも作られました。中国製のコピー商品も日本に出回っております。

これは普通のオルゴールとは違い消費者が編曲にかかわることができるという、今までにないユニークなコンセプトを持っていました。とにかくやってみると、本当にはまります、私たち夫婦も気が付いたら明け方でした。

しかし編曲もプロの手にかかるとすばらしいものになってしまいます。これは石川芳(カオル)さんの手になる♪ 「きよしの夜」 ♪で2009年クリスマスイヴの作品です。
リヒター社製のリベリオンと三協精機製のリズミカ、オルガニート20 
編曲支援ソフト「音のキャンバス」とペーパーロール
これはリヒター社製のリベリオンで、折りたたみ式の紙製ブックに音楽が記録されているものです。
この写真は長野県下諏訪にある諏訪湖オルゴール博物館奏鳴館の好意で撮影したものです。


三協精機製のリズミカの取り扱い説明書 昭和45年
当時開発に参加されていた田代和夫さんのご好意により入手できました。




現行のオルガニート20のムーブメント








たっこまん氏の開発した編曲支援ソフト「音のキャンバス」






赤いラインの入ったペーパーロールは純正の三協精機製、模様に入ったペーパーロールは「音のキャンバス」によって出力されたもの。下のA-4判の紙は「音のキャンバス」からプリンターに出力されて、まだペーパーロールの幅に切断されていないもの。A-4判の紙の上においてあるのは穴を打ち抜くための小型パンチ。


最近たっこまん氏がその編曲作業を支援するソフト「音のキャンバス」を開発しました。これはパソコンの画面上で編曲(カットアンドペーストなど)を行い、MIDI音源を鳴らして試奏できるというスグレものです。編曲が完成したらプリンターに出力し、切断してつないでパンチで穴を開ければ演奏用のソフトが簡単に作れるというものです。面倒な人のためにはサイトで完成品の編曲データも公開されています。編曲のノウハウも詳しく公開されています。オルガニート20で音が良いのはたっこまん氏が手で再度調律しなおしたものです。また頼めば#や♭つきの調律も引き受けてくれるようです。詳しくはここのサイトをご覧ください。

また三協商事はオルガニート33を開発しました。ムーブメントの大きさはオルガニート20と全く同じで鳴らせる音域も同じですが、黒鍵の音が追加されて編曲の自由度が向上しています。このオルガニート33を使って作曲活動や演奏活動をされているアーティストの方が居られます。そのCDは演奏サンプルと共に当サイトの通信販売のCDカタログに詳しく掲載してあります。

Pepiteさん
第1作「a la maison 1」のジャケットと収録されている♪ アメイジング・グレイス ♪ の演奏。
第2作「a la maison 2」のジャケットと収録されている♪ グリーン・スリーブス ♪の演奏。

はまじさん こと 宮本由利子さん。
第1作「やさしいオルゴール 1 日本の童謡」のジャケットとと収録されている♪ 岡野貞一の故郷 ♪

柴田晶子さんの口笛とはまじさんのデュオ。
「口笛とオルゴールのやさしい時間」のジャケットと収録されている♪ ホルストの木星 ♪
「口笛とオルゴールの星空散歩」のジャケットと収録されている♪ ビゼーのアルルの女 ♪
こちらはオルガニート20を演奏しながら口笛を吹いている柴田晶子さんです。

オルガノクライデ ( organocleide )
g013 G0127 掲載 2006/3/15改訂1 2016/7/14

シリンダー・オルゴールの型式の一つで、マンドリン・オルゴールのように同じ高さの速い連続音を低い音でも演奏できるように作られたオルゴールで原理は同じです。櫛歯は一旦音を出すとその歯は一定の時間使えません。従って同じ高さの音を連続して出すためには、同じ高さに調律した歯をたくさん準備して順番に弾いて音を出さねばなりません。

このタイプのオルゴールが演奏する低音の持続音はパイプオルガンのペダル鍵盤をイメージするような音が出てきます。オルガノクライデというタイプのオルゴールの櫛歯の調律は普通のオルゴールとはかなり異なっていて、櫛歯全体が1オクターブほど低く調律されています。
オルガンの写真
伊丹市のサン・シティ・ホールにあるベルギーのシューマッハ製中型パイプ・オルガンです。手で操作する鍵盤(マニュアル)3段と足で操作するペダル鍵盤とが組み込まれています。
Oruganocleideという名前はルクルト社によって使われてきました。ほかにLangdorff社やBremond社ではmandoline basso extraとかmandoline basse piccolo、Allard & Sandoz社ではOrganophonと呼ばれていました。

残念ながらオルガノクライデの特長がはっきりわかる写真をサイト・オーナーは持ち合わせておりません。もし次のオルゴールを買うチャンスが与えられるとしたら、この珍しいフォーマットも選択肢の重要な1つですが、多分出会うチャンスは無いでしょう。録音例も私のCDコレクションの中には無いようです。

下記はオルガノクライデの演奏です。オークションチーム・ブレッカーがYoutubeにUpしたものですが、オークションはとっくにすんでいるのでいつ削除されるかわかりません。
https://www.youtube.com/watch?v=mB7Tm5CRhjI&feature=youtu.be


オルガン・セレステ ( organ celeste )
g013 G0128 掲載 2005/4/19

この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「ボワ・セレステ」G0628の記事を参照してください。その記事の中では赤字でこの用語を表記しています。

イギリス Derwentwater from Friars Cragの風景を掲載しています。

オルゴール ( musical box, music box )
g013 G0107 掲載 2005/4/10 改訂1 2007/7/31

「オルゴール」は日本語です。起源がオランダ語のorgel(カナで表記するとオルヘルが近い)であると言われています。漢字で書くと「自鳴琴(オルゴール)」だそうです。この語源に関してはわがMBSI JIC(日本支部)の会員に詳しい人がいますので、その人の研究発表を待ってご紹介しようと思います。

手許にある世界大百科事典1972年平凡社刊第4巻には残念ながら玩具用の18ノート型程度しか掲載されておりません。ディスク・オルゴールや大型のシリンダー・オルゴールの説明は全く見当たりません。

1972年平凡社刊の世界大百科事典
その中でオルゴールに関する記述
1972年平凡社刊の世界大百科事典です。全34巻およそ20,000ページあります。






その中でオルゴールに関する記述は黄色の線で囲まれた部分(約0.3ペ−ジでしょうか)だけです。ディスク・オルゴールに関する記述は見当たりません。
大学の図書館などでいろいろ調べてみましたが、音楽事典などは自動演奏楽器に対して極めて冷淡です。

わがMBSI JICの規則にオルゴールの定義を書いておりますのでそれを引用してみますが、この定義は少し広すぎるような感があります、これは自動演奏楽器全般を対象としたクラブであるためです。アメリカにある本部の規約も同じ表現です。

第2条 (ミュージカルボックスの定義)
 支部規約および附則に用いられている「ミュージカルボックス」の用語は、音楽を機械的に演奏する装置、またはそれを組み込んだ楽器を意味する。この場合、動力源は手動、自動を問わない。これらの装置、楽器には、オルゴール、音楽的オートマータ、弦楽器、管楽器、打楽器、鍵盤楽器を含める。

このサイトではオルゴールとは単純に櫛歯を使って音楽を機械的に演奏できる仕掛けとでも定義しましょう。

株式会社オルゴール
g013 G0129 掲載 2005/8/30

社名  : 株式会社オルゴール
サイト : この会社のサイトです
所在地 : 長野県諏訪郡下諏訪町湖浜6154-6

歴史  : 1997年に株式会社三協精機製作所からオルゴール部門の一部が独立した会社です。三協精機製作所における30年以上の経験による編曲技術を基礎に、オーダーメイドによる受注生産を行っています。
株式会社オルゴールのパンフレット 
株式会社オルゴールの本社ビル
株式会社オルゴールのパンフレット 2種類です。

「あとりえ・こでまり」のコレクションより。




 




 
下は本社ビルです。

得意な分野 : 1台からでも受注するオーダーメイド・オルゴールが得意で、1台1台丁寧に手作りで制作してもらえます。希望の曲がレパ−トリーになければ、新たに編曲してもらうことも可能です。18ノートという小型のシリンダー・オルゴールから23ノート、30ノート、50ノート72ノートまで制作可能です。

サイト・オーナーが潟Iルゴールの本社工場を見学したときに強い印象に残ったのは、少量生産に適した自家製の機械設備と、女性の技術者が驚くほど短時間で櫛歯の調律作業をやって見せてくれたことです。またパ−ソナル・コンピューターを使って編曲の支援、試奏、シリンダーピンを打ち込む穴の加工まで一貫したシステムが運営されていました。

オルタネート・チップ ( alternating chip )
g013 G0130 掲載 2005/8/19

櫛歯の先端(チップ)が1本おきにしか付いていないタイプのシリンダー・オルゴールをオルタネート・チップと呼びます。割と珍しいタイプでサイト・オーナーも数例しか見たことがありません。ピンで弾かれるはずの櫛歯の先端が1本おきにしかありません。先端にチップが付いていない歯は当然音が出ません。私の実見した例ではチップの無い櫛歯は先端が切り落とされたような形をしていました。

通常シリンダー・オルゴールはできるだけたくさんの歯(有効な音の出る歯)を使って優れた編曲をする方向で努力を重ねているはずですが。オルタネート・チップのメリットとしては同じ長さのシリンダーを使っても、より多くの曲数を稼げるということぐらいです。シリンダー・オルゴールも後期になってくると演奏する音楽の優劣ではなくて、ベルや太鼓で驚かす(オーケストラ・ボックス)とか人形を動かすとか音楽以外(私の個人的見解ですが)の方向に進んでいたのではないでしょうか。その一環としてフォア・パー・ターン(つまりシリンダーの円周を4分割して1回転で4曲演奏)で32曲が演奏できるというくだらない曲数競争があったのではないでしょうか。

隣り合った櫛歯を同じ音に調律して共鳴させて音を分厚くするのではないかという説もありますが、先端が切り落とされた櫛歯が、どれも切りっ放しできちんとした調律をされているようには見えません。この状態で鳴り出すともっとも汚い不協和音(半音以下の誤差のため)を出すでしょう。
オルタネート・チップのオルゴール
外見からは普通のオルゴールですが、記憶によればオルタネート・チップのオルゴールです。櫛歯のクローズアップを撮りたかったのですが暗いのとガラスの反射でムリでした。
残念ながらどこで撮影したかの記録が失われています。