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ウォール・ハンギング型 ( Wall hanging Style )
g012 G0106 掲載 2005/4/10

壁掛型
縦型のディスク・オルゴールで小型のものは下記の絵のように壁掛型(Wall Hanging Type)としても多く作られました。ディスクの直径が50センチもある大型機(重量が50Kg以上)でも壁掛型として使えるように背面上部には壁掛用金具が取り付けられていました。
ウォール・ハンギング型ディスク・オルゴール
小型のアップライト型オルゴール
Symfonion Automaten No. 39U Meteor
ウォール・ハンギング型ディスク・オルゴール
ディスク・サイズ 34cm 100ノートの小さなもの
高115cm 幅64cm 奥行36cm
出典 カタログ・リプリント Ernst Holzweissic Nachf 1898年 P10



シンフォニオン社製の小さなアップライト型ディスク・オルゴールの例。ケースの上に載っているピアノのキーとの比較でいかに小型なのかが良くわかります。ケースの裏側には壁掛け用の金具が付いていました。

この写真は東京都渋谷区にある川上楽器の好意で撮影したものです。

エスティメイト
g012 G0114 掲載 2005/4/19

この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「オークション」G0117の記事を参照してください。その記事の中では赤字でこの用語を表記しています。
イギリス Thirlmere and Helvellynの風景を掲載しています。

エッジ・ドライブ ( edge drive )
g012 G0113 掲載 2005/4/19

ディスク・オルゴールディスクを回転させる力を伝える方式は2つあります。周辺部分に回転する力を伝える方式はペリフェラル・ドライブとか、エッジ・ドライブとか呼ばれています。もう一つはディスクの中心に近いところに力を伝える方式で、センター・ドライブと呼ばれる方式です。

エッジ・ドライブ(ピニオン・ドライブとかギア・ドライブとも呼ばれる)は主として小型の機種に使われています。ディスクの周囲に歯車を切ってあり、スプリング・モーターの力は歯車を介してディスクに伝えられます。

シンフォニオン社ユンハンス社(現在も盛業中の大きな時計メーカーです)に最小のディスク・オルゴール(Style 20ディスクの直径は4インチ1/2 で11.5cm)を目覚まし時計の部品として1900年から1905年ごろまで納入しました。このStyle20はほぼ同じ内容でセンター・ドライブとエッジ・ドライブがありました。

1846年にスイスのサント・クロワ村で創業したヘルマン・トーレンスによっても同じようなエッジ・ドライブのディスク・オルゴールが永年にわたって作られました。その事業はリュージュ社によって継承され現在も商品として販売されています。

トーレンス社のエッジ・ドライブのディスク・オルゴール トーレンス社のエッジ・ドライブのディスク・オルゴール
トーレンス社のエッジ・ドライブのディスク・オルゴールです。
ディスクの周囲が歯車になっているのに注目してください。

出典 ともにカタログより

シンフォニオン社製 エロイカ ( Eroica )
g012 G0115 掲載 2005/4/28

世界で最初にディスク・オルゴールを開発したシンフォニオン社によって作られたオルゴールで、最高傑作といえば38型エロイカということになるでしょう。13インチ5/8のセンタードライブディスクが3枚一組で、2台のスプリング・モーターによって同時に回転して演奏します。50ノートの櫛歯2枚がセットになって1枚のディスクに対応しています。ディスク3枚で3組6枚の櫛歯、300ノートで演奏するという凝った仕掛けになっております。日本には多分20台以下しか持ち込まれていないと推定します。編曲の違う3枚の8000番台のディスクを演奏するエロイカは確かにすばらしいオルゴールです。マルチプル・ディスク型のオルゴールとしては最も成功した機種でしょう。サイトオーナーが持っているので、ついつい自慢したくなってしまいますが。

ケースのデザインは主として2種類に分けられます。いわゆるドーム・トップと呼ばれている時計とセットになったデザイン(下の写真では左から3番目)のものと、普通の細いアップライト型です。普通の細いアップライト型もリトグラフ付(下の写真では左端)、時計を載せたもの(左から2番目)、丸い装飾ガラスのもの(右端)、普通の素通しガラスのものがあります。

シンフォニオン 38型 エロイカ
輸送用木枠に固定されたエロイカのムーブメント
シンフォニオン 38型 エロイカ
左よりリトグラフ付き、時計を載せたもの、ドーム・トップ、丸い装飾ガラス付き
左端はファミリア坂野コレクション所蔵。左より2番目の写真は山梨県北杜市にある萌木の村博物館ホール・オブ・ホールズの好意で撮影したものです。次は撮影記録なし。右端の写真は東京都文京区にあるオルゴールの小さな博物館の好意で撮影したものです。

リストア作業が終わって輸送用フレームに取り付けられて送り返されてきたエロイカのムーブメントです。これからフレームから取り出して、ケースに組み込もうとするところです。
左は表側で50ノートの櫛歯2枚1組が3組あるのに注目してください。右は裏面でスプリング・モーターが2台見えます。コイン・トリップ・アームの一部が木製(軽量化のため)です。これはコイン1枚で1回演奏するタイプ。
サイトオーナー所蔵
コイン・オペレートのもの(営業用)と、ノブを引き出して演奏するもの(家庭用)とがありました。コイン1枚で1回演奏するものと、2回演奏するもの(専用のギアが最初から組み込まれていました)とがありました。

ディスクで8000番台の番号のものは3枚とも編曲が違っていてA,B,Cのマークが書かれています。6000番台のものは小型オルゴールに使われるもので、それを3枚同じものを同時に演奏して、サブライム・ハーモニーの効果を狙うものでした。

3枚のディスクの同期をとるのは結構時間がかかります。サイトオーナーは専用のテスト・ディスクを使って3日かけました。エロイカを移動させるときガバナーにティッシュペーパーを挟み、コイン・トリップ・アームを針金等で固定しなければなりません。固定する前にエロイカを傾けるとコイン・トリップ・アームの一部を支えている短いシャフトを曲げて(サイトオーナーが経験済み)しまいます、くれぐれもご用心。
なおDavid BowersのエンサイクロペディアのP225〜227にこの項目に関する写真や解説が掲載されていますのでご覧ください。

オークショニア ( aucutioneer )
g012 G0116 掲載 2005/4/19

この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「オークション」G0117の記事を参照してください。その記事の中では赤字でこの用語を表記しています。
イギリス Rydalmereの風景を掲載しています。

オークション ( auction )
g012 G0117 掲載 2005/4/19

オークションとは公開のオークション会場で競争入札をすることです。オークション・ハウス ( auction house オークションを主催する会社、クリスティーズ Christie’s、サザビーズ Sotheby’s、などが有名)に申し込むと下記のようなオークション・カタログ( auction catalog )が送られてきます。その中で気に入ったものがあれば買いたい金額を所定のフォーム(カタログの最後に添付)に書いてファックスで申し込む(ビッド bid、応札)ことができます。現地でオークションに参加することもできます。カタログには下記のように簡略にその品物( ロット lot )の説明が記されています。
オークション・カタログの表紙
オークション・カタログの内容例
オークション・ハウスに申し込むと左記のような次のセールの綺麗なカタログが送られてきます。表紙はそのセールのハイライトとなるロットの写真が掲載されています。サイズはA-4より少し小さい。

出典 クリスティーズ 1997年7月24日実施 セール#MMM-7682のカタログ表紙


カタログの中には写真(重要なものはカラーで)、ロット・ナンバー( lot number 整理番号 )、簡単な説明、状態の説明、付属品( ディスク、交換用シリンダー )、サイズ、エスティメイト( estimate 落札予想価 )、もしあれば重要な来歴( プルーバナンス provenance )が書かれています。
左の例ではきわめて珍しいフランスが関わったオルゴールであるので、その詳しい説明文が付けられています。

出典 クリスティーズ 2003年10月29日実施 セール#MMM-9724のカタログ P39

オークションは現状渡し( アズイズAs is )です。どの程度まで壊れているか、部品の欠品が無いかなどは全て参加者( バイヤー buyer )の責任となります。カタログの説明だけでは良くわからないので問い合わせをして報告( コンディション・レポート condition report )を求めることもできますが、私の経験ではIn good condition.とかいう程度の役に立たない情報しか得られません。特にシリンダー・オルゴールは工芸品の性格が強いので個々の状態を耳で確認しなければなりません。セールの2〜3日前にオークション会場で実際にそのロットをチェック( プレビュー previewとかビューイング viewingといいます)することができます。

セールの会場では司会者( オークショニア auctioneer )が進行を管理します。オークショニアが金額を所定の額( インクリメンツ increments )づつ競り上げていき、参加者(バイヤー)は予定していた金額に達するまで札または小さなプラカード( パドル paddle )を挙げてオークショニアに購入の意志を伝えます。もう買えない金額まで競り上がったらパドルを下ろして競りから降ります。最後までパドルを挙げていれば、または書面入札(アブセンティー・ビッド absentee bid )が最高値であればオークションで勝ち( 落札 )です。落札すると所定の手数料( バイヤーズ・プレミアム buyer’s premiumクリスティーズの場合17.5% )を加算してオークション・ハウスに支払い、そのロットを引き取ることができます。全ての落札価格は後日ウエブサイトで発表されます。

オークションはアズイズが原則です。破損したものや部分品が足りないものも多く出品されております。しかしリストアの材料を探すという観点で見ればこれほど面白い場はありません。オルゴールに力を入れていて出品が多いオークション・ハウスは下記のとおりです。

クリスティーズ Christie's

スキンナー Skinner

オークションチーム・ブレッカー Auction Team Koeln
        日本の窓口のサイトはこちらです。
    
ボナムズ          Bonhams

オークション・カタログ ( auction catalogue )
g012 G0118 掲載 2005/4/19

この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「オークション」G0117の記事を参照してください。その記事の中では赤字でこの用語を表記しています。

イギリス Kirkstone Pass and Brothers Waterの風景を掲載しています。

オークション・ハウス ( auction house )
g012 G0119 掲載 2005/4/19

この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「オークション」G0117の記事を参照してください。その記事の中では赤字でこの用語を表記しています。

イギリス Ullswaterの風景を掲載しています。

オーケストラ・ボックス ( orchestra box )
g012 G0120 掲載 2005/4/18

シリンダー・オルゴールの型式の一つで、多くの楽器が組み込まれたものです。シリンダー・オルゴールは優れた音楽を追求する方向とは別に、動きの面白さや目新しさを追求する動きもありました。ベルの組み込みから始まった傾向ですが、ドラム(真鍮の薄板とか薄い獣皮を張った太鼓)、スネア・ドラム(細い金属線を何本か太鼓の膜面に軽く接触させて張ったもの、ザッザーッという音が特徴)、小さなリード・オルガン(ボワセレステ参照)、カスタネット、ウッドブロック、シンバル、小型のパイプ・オルガンなどがありました。

視覚的な面白さのためにダンスをする人形、蜂や小鳥の形をしたベルを叩く撥(ハンマー、ストライカー)、マンダリン(中国人)がベルを叩く仕掛けなども組み込まれました。このようなものをガジェット( gadget )と呼ぶそうです。音楽的に見ればボワセレステ以外は全くの邪魔者だと思いますがいかがでしょうか? ちなみにオルゴールのCDでこのタイプを録音したものは、なかなかありません。博物館で実際のオーケストラ・ボックスを聞くチャンスがあってもたいていはどこかが故障しているか調整不足で完全な演奏はなかなか聞けません。
オーケストラ・ボックスのイラスト
オーケストラ・ボックスの例
オーケストラ・ボックスのイラスト 左側が外観、右側がそのムーブメント
出典 左側 カタログ・リプリント Jacot & Son 1893年 P15
    右側 カタログ・リプリント Heeren Bros. & Co. 1896年 P27
ベッドプレートに立っている3本のレバーを操作するとベル、ドラム、 カスタネットの動作を停めることができます。

珍しい大きなオーケストラ・ボックス、ガラスのパネルから中の動き(ムーブメントとダンスをする人形)がよく見える。

この写真は伊豆オルゴール博物館の好意で撮影したものです。
David BowersのエンサイクロペディアのP38〜49にこの項目に関する写真や解説が掲載されていますのでご覧ください。

最近リュージュ社が優れたオーケストラボックスの新製品を作りました。このオーケストラ・ボックスは優秀なオルゴールで、初めて音楽として効果的に動作するドラム(太鼓)を聞きました。この写真は名古屋の東亜貿易さんの好意で撮影(2008年12月)できたものです。

オーケストリオン ( orchestrion )
g012 G0121 掲載 2005/6/1

オルゴールが段々と大きくなり複雑な音楽を要求されるようになると、ピアノやオルガンから派生した自動演奏楽器オーケストリオンが作られるようになりました。

オーケストリオンにはアップライト型ピアノに自動演奏装置とともにいろいろな楽器を組み込んだピアノ系のものと、小型の自動演奏装置付きパイプ・オルガンにいろいろな楽器を組み込んだオルガン系のものとがあります。写真で上の3枚はピアノ系、下の3枚はオルガン系です。

ピアノ系オーケストリオンはアップライト型ピアノ由来のものなのでサイズは小振りで一般家庭にも置けます。調律を毎年やっておかないと音楽がおかしくなってしまいます。演奏データが入った紙のロール(所謂ピアノ・ロール)は今でも生産されています。
ピアノ・オーケストリオン
オルガン系オーケストリオン
左端は典型的なピアノ・オーケストリオンです。自動演奏装置のロールペーパーを読み取る部分が正面のステンドガラスの中に組み込まれています。ドラムなどは下半分に収容されています。中央はロールペーパーが上部に折りたたんで収容されているもの。右端はアコーデオンが組み込まれたものです。

左端はインホフ・ムクル社製のオーケストリオンで高さ3m、幅1.7mという大きなものです。演奏データは木製のバレルと呼ばれる大きなシリンダーに記録されています。この写真は山梨県北杜市にある萌木の村博物館ホール・オブ・ホールズの好意で撮影したものです。
中央はウェルテ社製のやや小型のコッテージ・オーケストリオンと呼ばれたものです。演奏データはペーパー・ロールです。
右端はレジデンシャル・オーケストリオンと呼ばれる極めて大きなもので高さが5.8m、幅が4mもあります。演奏データは木製のバレルと呼ばれる大きなシリンダー2本に記録されています。当然音も大きく宮殿のようなお屋敷のボールルーム(ダンスをする部屋)に設置されたようです。

私はごく普通の家に住んでいますので、このような大きな自動演奏楽器とはとんとご縁がありません。あるコレクターは「オルガン系のオーケストリオンを書斎へ運び込むのに16名の人手が必要だった、当然壁を壊して持ち込んだ。」と語っていました!!!。私もオルガン系のオーケストリオンは演奏する音楽が良いので写真やCDを収集していますが、どうも詳しくはありません。後日よく調べてからEssayで発表しようと思っております。山梨県北杜市にある萌木の村や新宿区信濃町にある民音文化センターに行くとインホフ・ムクルやウェルテのオーケストリオンを聞かせてもらえますし、CDも販売しております。

David BowersのエンサイクロペディアのP343以降にこの項目に関する多くの写真や解説が掲載されていますのでご覧ください。